結論から言う。このドラマ、見た後に残るのは「何だったんだこれ」という虚脱感だ。
でもそれが不快かと言われると、ちょっと違う。全2話・合計50分足らず。夕飯の残り物を片付けるようなテンポで見終わって、しばらく放心する。よくある不倫モノともサスペンスとも違う、なんとも分類しがたい珍作。それが『不倫をコウカイしてます』というドラマの正体だ。
ABEMAで配信されていなかったら、おそらく一生出会わなかっただろうし、出会わなかったとしても人生に何の影響もなかった。それでも、見たことを後悔はしていない。…たぶん。
設定だけ聞くと天才の仕業
まず前提を共有しておく。主人公の境通(塩野瑛久)は、妻がいながら社内で複数の女性と不倫を繰り広げるクズ会社員だ。ある朝目覚めると、首に爆弾がくくりつけられている。そしてスマホに届く一通のメッセージ。
「今から社内不倫をネットで生配信しろ。映像が途切れるか、視聴者数が5人以下になれば、首の爆弾を爆破する」
…控えめに言ってぶっ飛んでいる。
不倫男が自分のクズ行為をネット上に晒されるという構図、しかもそれを「やらなきゃ死ぬ」というサバイバル形式で進めるアイデアは、正直めちゃくちゃ面白い。「コウカイ」が「公開」と「後悔」のダブルミーニングになっている時点で、企画書だけなら100点をあげたい。
「配信画面だけ」で全編を見せるという暴挙
このドラマ最大の特徴は、全編が「配信画面」だけで構成されているということ。いわゆるPOV形式だが、さらに尖っていて、視聴者はあたかもネット配信を見ているような画角で全シーンを追うことになる。
撮影を担当したのは、あの『カメラを止めるな!』でカメラマンを務めた曽根剛。長回し・ワンシチュエーション・休日のオフィスという制約の中で、カメラ一台でどこまでやれるか、という実験映画的な側面もある。
監督の酒見顕守が「クズ男が翻弄される悲劇ならぬ喜劇をPOVで撮った」とコメントしている通り、本作のトーンは「シリアスなのに笑ってしまう」という微妙なライン。意図的にB級感を出しているのか、本気でこうなったのかは正直判断がつかない。
<PR> 見てから判断するのが一番早い
ここまで読んで「結局面白いのか面白くないのか分からない」と思った人。正解だ。このドラマは語るより見たほうが圧倒的に早い。全2話、各24分。合計でも50分足らずだから、映画1本の半分もかからない。
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ABEMAなら広告つきプラン月額680円で全話見放題。正直言って50分のドラマ1本のために1,180円のプレミアムプランに入れとは言わないが、680円なら他にも気になる作品をまとめて消化できる。合わなければ翌月解約すればいい。失うのはワンコインと少々だけだ。
塩野瑛久の「クズ演技」が意外と見もの
キャストの話をする。主演の塩野瑛久は、今でこそ仮面ライダーシリーズなどで知名度を上げたイケメン俳優だが、本作では完全にクズ男全振り。妻に嘘をつき、不倫相手を掛け持ちし、追い詰められると泣きわめく。ヘタレでありながら、どこかで「俺は悪くない」と思っている感じ——塩野の顔面の良さが余計にイラつかせてくれる。
Filmarksのレビューでも「塩野くん見たさに見たけど、何を見せられているのか戸惑った」という声が複数あり、ファンにとっては複雑な作品だろう。でも逆に言えば、あのルックスでここまで振り切ったクズ役をやれる度胸は評価していい。
同僚の仲村役で出る西銘駿は、「男劇団 青山表参道X」での塩野の盟友。クールで冷静な仲村が、カオスに巻き込まれながらも主人公を助けようとする姿はちょっとした清涼剤になっている。
妻の由香里を演じる長井短は、コメディセンスが光る。不倫に一切気づいていない無邪気さが、状況のシュールさを際立たせる。不倫相手の永尾まりや・野呂佳代のコンビもなかなかのカオスで、全員が全員「この会社ヤバくないか?」と思わせてくるバランスは絶妙だ。
正直に言おう。後半は散らかっている
ここからが本音パート。
良かった点:
- 設定とアイデアは文句なしに面白い。「不倫×爆弾×生配信」というキーワードだけで興味が湧く
- POV全編配信画面という実験的手法が新鮮。低予算を逆手に取った判断は賢い
- 塩野瑛久のクズ演技の振り切り方には見応えがある
引っかかった点:
- 2話しかないのに後半で話が広がりすぎて収拾がつかなくなる。犯人の正体が明かされるくだりもやや唐突
- リアリティラインが不安定。「首に爆弾」を受け入れた時点で何でもありなのは分かるが、「素人の配信がこんなに簡単にバズるか?」という引っかかりは残る
- 全体的にチープ感が強い。POVだから仕方ない部分もあるが、セット・照明・音響のすべてが「自主映画」のノリに近い
- 終わり方がシュール。ネット上で「打ち切りになったの?」という感想が出るのも納得してしまう
総合すると「アイデア一本勝負で、その一本は確かに面白いけど、料理の仕方がもう少し何とかならなかったか」というのが偽らざる感想だ。
こういう人は見たほうがいい/やめたほうがいい
向いてる人:
- 不倫ドラマに「天罰」展開を求めるタイプ。クズ男が追い詰められる爽快感がある
- POV・ワンカット系の実験映画が好き。『カメラを止めるな!』を楽しめた人なら雰囲気は合う
- 塩野瑛久のファン。普段見られない一面を確実に拝める
- 50分で完結するコンパクトなドラマを探している人
向いてない人:
- 丁寧な伏線回収やオチの完成度を求める人。期待しすぎると肩透かしを食らう
- B級のノリが生理的に無理な人。全編にわたってチープさが漂う
- 不倫テーマ自体がNGな人。笑いに昇華しているとはいえ、不快に感じるシーンはある
まとめ
『不倫をコウカイしてます』は、企画の着眼点だけなら傑作だった可能性がある作品だ。全2話という尺がプラスにもマイナスにもなっていて、短いから気軽に見られるが、短いから展開が雑にもなる。50分を使って「二度とない体験」をしたいなら、試す価値はある。ただし、傑作を期待して再生ボタンを押すと確実にコウカイする。あなたはどっちの「コウカイ」になるか——それは見てからのお楽しみだ。





